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Channel: 神奈川・横浜・川崎の異業種交流会 経営者の勉強【神奈川県中小企業家同友会】
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第5号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート) (2016年7〜9月期)

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前年同期比の売上高、経常利益DI は二桁となっており、次期の見通しでは、数値が共に増加している。経常利益水準DI でも二桁を維持している。しかし、業況水準、業況判断のDIは伸び悩んでいる。業種別では、サービス業の各DIの数値が他業種より平均して高くなっている。経営上の問題・重点としては、共通して人材に関する事項の割合が高い。

 

  • 売上高DI、経常利益DI ともに2 ケタの数値を維持している。次期見通しにおいても売上高DI、経常利益DI の数値は増加している。業種別では、前年同期比、次期見通しでサービス業が突出して高い数値となっている。今期の業況水準DI が9、業況判断DIが前期比11、前年同期比12、次期見通し24である。

  • 設備投資の実施企業は約3割、次期に設備投資を計画している企業は約2割強である。設備投資の内訳では「事務所・店舗」「機器設備」「工場」、という順で割合が高い。

  • 資金繰の状況では、大きな窮屈感はみられない。

  • 経営上の問題は、「従業員不足」「同業者相互の価格競争の激化」「人件費の増加」の順に割合が高い。これらの課題をクリアするために「新規受注(顧客)の確保」「人材確保」「付加価値の増大」への取組に経営上の重点が置かれている。

  • 前回のKD レポートの結果よりも売上高DI、経常利益DI が減少傾向にある。サービス業では、各DIでさほどの落ち込みはみられなかったが、他業種の落ち込みが大きくなっている。また、人材不足の影響により、人件費が増加しており、会員企業の経営体質を弱くしている。会員企業は人材教育等をより強化し、製品・サービスの高付加価値化を目指す必要がある。

 

【調査要領】

(1)調査時 2016 年9月15日〜10月7日
(2)対象企業 神奈川県中小企業家同友会会員
(3)調査の方法 e.doyu(会員グループウェア)とFAX によるアンケート
(4)回答企業数 783 社より135 社の回答を得た(回答率17.2%)
(建設業14社、製造業44社、商業18社、サービス業56 社、不明3社)
(5)平均社員数  (1)正規社員24.5 人 (2)パート・アルバイト45人

※文章中のDI とは、ディフュージョンインデックス(Diffusion Index)の略で、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値です。

 

 

神奈川県中小企業家同友会の景況調査
〜概況報告〜

玉川大学経営学部助教 長谷川英伸

 

景況調査の結果

1. 売上高・経常利益・経常利益の水準・業況水準・業況判断

1-1. 売上高

全業種の売上高DI は、前年同期比で21、次期見通しは25となっている。各業種のDIは下記の図表1の通りである。前年同期比では、建設業の8、製造業の0、情報・流通・商業の18、サービス業の44となっており、サービス業が他業種より値が突出している。次期見通しでは、建設業の17、製造業の15、情報・流通・商業の24、サービス業の32となっており、サービス業以外は次期見通しの値が増加している。製造業の前年同期比の売上高DIは0となっているが、次期見通しでは15と増加している。一方、サービス業の前年同期比と次期見通しの売上高DIは高い数値を示しており、業種間格差が拡大している。建設業では、前年同期比の売上高DIが8、情報・流通・商業では、18となっているが、次期見通しの売上高DI が各17、24となっており、需要が見込まれる。

 

図表1 売上高DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

 

1-2. 経常利益

次に、経常利益をみてみる。全業種の経常利益DIは、前年同期比で15、次期見通しは319 となっている。各業種のDIは下記の図表2の通りである。売上高DIとは異なり、経常利益DIはマイナス水準の業種が存在している。情報・流通・商業に関しては、前年同期比が△29と他業種よりも数値がかなり低い。また、建設業においては、前年同期比で8を示しているが、次期見通しは△9と落ち込んでいる。製造業では、前年同期比が7であり、次期見通しは21と増加している。サービス業の前年同期比が35で、次期見通しは26と数値が減少しているが、他業種と比較しても高い数値を示している。経常利益DIの動向をみた場合、業種間の違いが明確となっている。

 

図表2 経常利益DI値

図表1 売上高DI値

筆者作成

1-3. 経常利益の水準・業況水準・業況判断

経常利益の水準については、黒字の割合から赤字の割合を差し引いた経常利益水準DIでみていく。全業種のDIは26、建設業→33、製造業→10、情報・流通・商業→△6、サービス業→47である。情報・流通・商業以外は数値がプラス水準となっている。特にサービス業は47と高いDIを表している。
次に業況水準についてみていく。全業種のDIは9、建設業→7、製造業→14、情報・流通・商業→△28、サービス業→20である。情報・流通・商業は、経常利益DIが低い数値を示している影響もあり、業況水準は伸び悩んでいる。一方、建設業はプラス水準ではあるものの、製造業、サービス業の数値には及ばない。
業況判断では、全業種の前期比は11、前年同期比は12、次期見通しは24となっている。業種別の次期見通しでは、建設業→22、製造業→23、情報・流通・商業→0、サービス業→30である。情報・流通・商業以外の業種は数値が二桁となっており、今後業況が改善される可能性もある。

 

2. 経常利益が増加した理由、減少した理由

経常利益が増加した理由として1番多かったのが、「売上数量・客数の増加」の64.5%であった。次いで「売上単価・客単価の上昇」の13.2%、「外注費の減少」の5.4%であった。一方、経常利益が減少した理由で1 番多かったのが、「売上数量・客数の減少」の54.3%であった。次いで多かったのが、「人件費の増加」の15.2%、「売上単価・客単価の低下」「原材料費・商品仕入額の増加」の10.9%であった。
今回の結果では経常利益が増加した理由として、「売上数量・客数の増加」の割合が過半数を超えた。また、経常利益の減少理由として、「人件費の増加」の割合が2番目に高い割合を示しており、人手不足を解消するために、人件費を上げることで経営を圧迫させている可能性が考えられる。

 

3. 設備投資の状況、資金繰の状況

設備投資について、今期の実施状況と次期の実施予定状況についてみていく。今期に設備投資を実施したと回答したのは全体の32.8%であった。次期に設備投資を計画していると回答したのは28.8%であり、次期に設備投資を計画している割合は3割を下回っている。今期に設備投資を実施したと回答した企業で投資した項目別にみてみると、「事務所・店舗」「その他」が23.5%、「機器設備」が21.6%、「工場」が17.7%で上位を占めていた。次期の設備投資計画では、「事務所・店舗」が27.9%と一番高い割合を示しており、次いで「その他」が25.6%、「工場」「情報システム」が16.3%であった。
現在の資金繰の状況をみていく。資金繰の状況に関しては、余裕あり→16.3%、やや余裕→19.3%、順調→33.3%、やや窮屈→19.3%、窮屈→11.8%と余裕ありとやや余裕と回答した企業の割合がやや窮屈、窮屈と回答した企業の割合を若干超えている。

 

4. 現在の経営上の問題点・重点

現在の経営上の問題点をみていく。これは各企業上位3 つまでを選び回答したものである。1番高い割合を示したのが、「従業員不足」の18.9%で、次いで「同業者相互の価格競争の激化」の13.8%、「人件費の増加」の10.4%となっている。人手不足が経営上の重大な問題となりつつあり、その影響で人件費の増加をもたらしている。
経営上の重点も各企業上位3つまでを選んで回答したものである。まず、現在実施中の力点では、多い順に、「新規受注の確保」→20.2%、「人材確保」→15.9%、「付加価値の増大」→15.3%となっている。以上のように、経営上の問題点と重点は人材に関する項目が上位を占める形となった。

 

5. 特別質問の結果について(無回答は除く)

今回の特別質問では、後継者に関する項目について行った。まずは、後継者が決まっている(すでに承継した、も含む)、または後継者が決まっていない事柄に関した結果からみていく。各項目では、「決まっている」→34.1%(44)、「決まっていない」→65.9%(85)という結果であった。約3割の企業は後継者が決まっていることになる。

次に後継者を決定した理由に関する項目の結果をみていく。各項目では、「役員・従業員の理解を得やすい」→48.7%(19)、「取引先からの理解を得やすい」→15.4%(6)、「事業を成長させることができる」→15.4%(6)、「金融機関からの理解を得やすい」→5.0%(2)、「現経営者との相性が良い」→10.3%(4)、「他に適当な人材がいない」→2.6%(1)、「その他」→2.6%(1)、という結果であった。後継者を決定する際には、役員や従業員への配慮が必要となることがわかる。後継者に対しては、事業を成長させるよりも既存の組織体制に受け入れやすい人物が選ばれる傾向にある。

一方、後継者が決まらない理由は、「適任者がいない」→65.6%(40)、「適任者が応じない」→6.5%(4)、「その他」→27.9%(17)となった。後継者に任命したい人物が社内にいないケースが考えられる。仮に適任者が社内にいれば、後継者になることを断るケースは少ないといえる。後継者が見つからなかった場合には、「可能なら譲渡・売却したい」→59.6%(28)、「廃業する」→19.1%(9)、「その他」→21.3%(10)となった。後継者が見つからなければ、廃業するケースは比較的割合が低く、自社の事業を他者に譲ることに対しては、現経営者の抵抗感があまり見受けられない。

最後に事業承継について誰かに相談しているか(した、も含む)に関する結果では、「相談している(した)」→24.8%(29)、「相談していない」→75.2%(88)となっている。後継者が決まっていない割合が約6 割強となっている現状があるにも関わらず、事業承継について第三者に相談していない現状が明らかになった。

神奈川県中小企業家同友会会員企業は、後継者に関して約6 割強が決まっていない結果となった。後継者を決めた理由については、役員・従業員が反対しない人材を選ぶ傾向があることが明らかとなった。また、後継者が見つからなかった場合、自社の事業を他者に引き継ぐことに対して抵抗感は強く表れていない。

 

 

第5号 神奈川同友会景況調査報告(KDレポート)


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